性格ややる気だけでは説明できない「心の設定」とは?
「うちの子は、どうして勉強に集中できないのでしょうか?」
保護者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
ゲームには何時間でも夢中になれるのに、勉強になると急に手が止まってしまう。
やればできるはずなのに、本気で取り組んでいないように見える。
何度声をかけても変わらない姿に、もどかしさや不安を感じている方も少なくありません。
あなたのお子さんにも、そんな様子はありませんか。
この記事では、次のような視点をお伝えします。
少しでも心が軽くなるきっかけになれば嬉しいです。
- 子どもが集中できない理由を「性格」だけで判断しない視点
- 心の奥にある“無意識の設定”とは何か
- 保護者が今日からできる関わり方
- ヒプノセラピーがどのように役立つのか
「集中できない」は性格の問題なのでしょうか?

私たちはつい、
「集中力がない」
「飽きっぽい」
「根気がない」
といった言葉で子どもの状態を説明しがちです。
もちろん、性格的な傾向が影響することもあります。
しかし、ヒプノセラピーの現場で多くの子どもたちと関わる中で感じるのは、それだけでは説明できないケースが非常に多いということです。
むしろ、その子なりの“理由”が、心の奥に存在していることがあります。
そしてその理由は、本人ですら気づいていないことがほとんどです。
私が「なぜ集中できないの?」と聞かない理由
ヒプノセラピーのセッションでは、私はあまり
「なぜ集中できないの?」
「どうして勉強できないの?」
とは尋ねません。
というのも、その問いに対して本人自身が答えられないことが多いからです。
実際には、
「何か悩みはある?」
「困っていることはある?」
と聞いても、
「特にありません」
「わかりません」
という答えが返ってくることも珍しくありません。
それは“問題がない”のではなく、まだ言葉になっていない、あるいは本人の中で問題として認識されていないだけのことがあります。
長く続いている状態は「日常」になり、自分では気づけなくなることもあるのです。
だから私は、
「最近ちょっと嫌だったことはある?」
「モヤモヤした出来事はあった?」
と、今の出来事や感情に近いところから、過去の出来事へと、感情の記憶を手繰りながらゆっくりと尋ねていきます。
すると、勉強や集中力とは一見関係のない出来事の中に、心の奥のテーマが見えてくることがあります。

今の行動とは関係なさそうな“過去の記憶”
例えば、こんな出来事です。
砂場で夢中になって遊んでいたときに「そんなこといつまでも続けていないで、帰りましょう」と言われた経験。
一生懸命勉強したのに、仲の良い友達とクラスが離れてしまった経験。
頑張って描いた絵を笑われてしまった経験。
大人からすればよくある小さな出来事でも、子どもにとっては深く印象に残ることがあります。
そしてその体験に、子どもなりの意味づけが起きていきます。
子どもがつくる「心の設定」
その意味づけが、心の中で何度も思い返されたり、似た体験と重なったりする中で、やがて“無意識の結論”として形になっていきます。
例えば、
- 頑張っても報われない
- 一生懸命やっても認められない
- 努力すると悲しいことが起きる
- 自分の気持ちには価値がない
こうした結論は意図的に作られたものではありません。
その年齢、その感情、その理解力の中で生まれた“生きるためのルール”のようなものです。
私はこれを、「心の設定」と呼んでいます。
本当は頑張りたいのに、頑張れない

大切なのはここです。
集中できない子どもの多くは、本当は「やりたくない」のではありません。
むしろ、
「できるようになりたい」
「認められたい」
「喜んでもらいたい」
そう願っています。
だからこそ苦しいのです。
頭では進みたいのに、心の奥の設定がブレーキをかけてしまう。
いわば、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態です。
放っておくと、その設定は「人生の物語」になる
もし
「どうせ無理」
「頑張っても意味がない」
という設定に気づかないまま成長すると、その感覚は少しずつ強化されていきます。
そしてやがて、
「自分はできない人間だ」
「どうせ挑戦しても無駄だ」
という“人生のストーリー”として定着してしまうこともあります。
これは決して特別な話ではなく、多くの人の人生の中で静かに起きていることです。
今日からできる3つの関わり方
ではどのようにしたらよいのでしょう。
今回は、今日からできる3つの関わり方をご提案します。
STEP1:「なぜ?」より「何があったの?」
「なんでやらないの?」ではなく「何か気になることあった?」と聴く。
原因ではなく、気持ちに寄り添うことが先です。
STEP2:結果だけでなく“過程”にも目を向ける
成果はもちろん大切です。
しかし、思うような結果にならなかったとき、
- 頑張ったこと
- 工夫したこと
- 挑戦したこと
にも目を向けてみましょう。
子どもは、「良い結果を出したときだけ認められる」と感じると、「結果を出さないと愛されない」という思いが芽生えたり、失敗を恐れるようになることがあります。
結果だけでなく、その過程にも価値を見出してもらえることで、「結果に関係なく、自分は愛されている」という安心感を育んでいくことができるのです。
STEP3:繰り返しに気づく
- やる気はあるのに続かない
- 直前になると避ける
- 同じ悩みを繰り返す
こうした場合、心の奥の設定が関係している可能性があります。
こんなときは、気軽に専門家に相談することも大切な選択肢です。
まとめ|ヒプノセラピーという関わり方

子どもが集中できないとき、私たちはつい「理由」を探したくなります。
しかし、その理由は本人ですら気づいていない場所にあることがあります。
行動の奥には、その子がこれまでの経験の中で感じ、意味づけてきた“物語”があります。
そしてその物語は、変えていくことができます。
ヒプノセラピーは、無理に変えるためのものではありません。
心の奥に静かに耳を傾け、本人も気づいていない「設定」に光を当てていくアプローチです。
もしお子さんの中に
「頑張りたいのに頑張れない」
「なぜか前に進めない」
そんな様子があるとしたら、まだ言葉になっていない心のメッセージかもしれません。
そして、そのメッセージにどう向き合うかは、専門的な理解が役に立つ領域でもあります。
ヒプノセラピーを学ぶことで、「行動の奥にある心の構造」を理解し、より深いレベルで人に寄り添う力が身についていきます。
もしこの記事を読んで、
「もっと深く理解できるようになりたい」
「子どもや人の心の仕組みを学びたい」
そう感じられた方は、ヒプノセラピーを体系的に学ぶことも一つの選択肢です。
表面的な行動ではなく、その奥にある“心の設定”に気づけるようになると、関わり方そのものが大きく変わっていきます。
(渡部あきこ)
