潜在意識に隠れた親子関係のパターン
大人になって平穏な関係になったと思っていたのに…。
50代になると、早い人では40代から、介護を含めた親との関わりに変化が起きることがあります。
些細な言動にイライラしてしまったり、優しくしたいのに突き放すような言い方をしてしまったり、すべてを一人で抱え込んでしまったり。
『穏やかに接していたはずなのに、なぜこんなに感情が揺れるんだろう』と自分を責めてしまう方も少なくないでしょう。
それは、無意識下に隠れていた、幼い頃からの親との関わりのパターンが表面化してきたのかもしれません。
介護は『親子関係の総決算』
私たちは幼い頃、『どう振る舞えば愛されるか』『どうすれば安全でいられるか』というルールを設定し、無意識のうちに潜在意識に刻み込みます。
これは、普段意識していない領域で、私たちの行動や感情の多くを自動化している部分です。
『頑張らなくてはいけない』『自分で何とかしなくてはいけない』『親の機嫌を損ねてはいけない』
こうしたルールは子ども時代を生き抜くのに必要でしたが、介護という立場が逆転する場面になると、逆に自分を苦しめ始めます。
助けを求められない。境界線を引けない。親の言動に振り回されている感じがする。
介護は、こうした昔からのパターンが表面化しやすい時期でもあるのです。
よくある3つのパターン

『良い子』パターン
幼い頃から親の期待に応え続けてきた人ほど、無理をしやすい傾向があります。
頑張る自分がアイデンティティの一部になっているため、休むことに罪悪感を覚えてしまったり、弱音を吐けなかったり、一人で何とかしようと抱え込んでしまったりします。
境界線が曖昧なパターン
幼い頃から親の機嫌を伺うことで自分の安心安全を確保してきた人は、親が辛いと自分も辛い、親が辛いのは自分の所為だと感じるようになります。
親がこうなったのは自分の所為、自分がこうなったのは親の所為という風に思いがちなので、介護という場面で、苦しくなってしまうことが多くなります。
未解決の感情パターン
幼い頃の満たされなかった思い、傷ついた経験が未解決のままになっていると、介護などで『世話をする』という逆転の立場になったとき、潜在意識に眠る、その思いや経験が火種となり、怒りが湧いてくるようになります。
どれも悪いことではありません。
子ども時代の自分を守るために、その人なりに編み出した知恵だったり、策だったりするのです。
ただ、今の自分にとってはもう必要のないことであれば、少しずつ手放していくことができます。
まずは『自分はどのパターンが近いだろう』と、責めることなく静かに眺めてみることから始めてみましょう。
パターンに気づくだけでも、自分を緩めることができます。
『家に帰りたい』が、いつしか消えていった
これは私自身の話です。
気ままなひとり暮らしをしていた父が、ある日突然入院することになりました。
2ヶ月の入院期間を経て、老人保健施設へ入所することになりましたが、初日から『ここはいやだ、家に帰りたい』の一点張り。
一人での暮らしが難しいとどんなに伝えても納得してもらえず、電話がかかってきたり、面会のたびに同じ訴えが繰り返され、ほとほと困り果てていました。
その頃ちょうど上級講座を受講中だったので、親を説得するのではなく、自分自身のインナーチャイルドを整えることに集中しました。
『父は私が困ること、イヤなことばかりする』『自分が何とかしなければ』という子どもの頃からの思い込みと向き合いました。
すると、私が変化していくのと並行するように、親の訴えも少しずつ落ち着いていきました。
入所して3年経ちましたが、今では、私を含め、周りを困らせるような言動もなくなり、仲の良い介護士さんや入所者さんもできて、穏やかに過ごしています。
父への説得が成功したわけでも、父自身がセラピーを受けたわけでもありません。
変わったのは私の内側だけです。
それでも関係性や状況は明らかに変化しました。
受講前に聞いていた『自分の内側を整える』ことで『目の前に展開される状況が整う』ことを、実感した出来事でした。

意識だけでは変えられない理由
『頭ではわかっているのに、感情がついてこない』ー介護中の方からよく聞く言葉です。
これは決して意志の弱さではありません。
私たちの行動や感情の多くは、意識ではなく潜在意識によって動かされています。
理性で『もっと肩の力を抜こう』『自分を責めなくていい』と理解していても、潜在意識に刻まれた古いパターンがそのまま残っていれば、実際の場面では以前と同じ反応が出てしまうのです。
だからこそ、意識レベルの努力や工夫だけでなく、潜在意識そのものにアプローチすることに意味があります。
たとえば、ヒプノセラピーでは、深いリラックス状態の中で、こうしたパターンや感情に安全な形でアクセスしていきます。
『親との関係のルール』に気づいて今の自分に合った形に書き換え、未消化のまま残る怒りや悲しみを感じ切って手放し、罪悪感なく親との適切な境界線を引けるようにしていくー
これは親を否定するための作業ではなく、自分軸を取り戻し、自分らしく、親とより穏やかに向き合えるようになるためのプロセスなのです。
介護をする自分を、まず大切にすること
介護の中でつらさを感じるのは、それだけ親のことを真剣に考えているからです。
けれど、その真剣さで自分をすり減らしては、続けられるものも続けられません。
潜在意識に刻まれた古いパターンに気づき、緩めることは、親のためである以前に、まずあなた自身のための作業です。
『頭ではわかっているのに感情が追いつかない』と感じているなら、それは潜在意識の中の何かが、まだ癒えていないサインかもしれません。
そこに丁寧に向き合うことで、介護という時間の色合いが、少しずつ変わっていくことがあります。
親を変えようとするのではなく、自分の内側にそっと目を向けてみること。
それが、あなた自身と、そして親との関係を、これから先も穏やかに保っていくための、確かな一歩になるはずです。
説得しても変わらなかった関係が、自分が変わることで静かに動き出すー
それは、きっとあなたにも起こりうることです。
(ごとうともこ)
