(全3回・連続掲載予定)
Part 1 「痛み」はあなたの敵ではない!?
Part 2 感情を使った痛みからの解放(アメリカでの試み)
Part 3 脳を騙して痛みを取り去るヒプノセラピー(フランスの医療現場より)
Part 2 感情を使った痛みからの解放(アメリカでの試み)
Part1では、私たちが感じる「痛み」についての意外な事実を、ご紹介させていただきました。
- 痛みは体の異常を教えてくれる危険信号である
- 痛みはまず脳に伝わり、脳が情報を認識して初めて「痛い」と感じるものである
- 原因のわからない痛みには、脳の認知異常が関与していることもある
- 痛みからの危険信号に耳を傾けることで、痛みの緩和や解消も可能である
今回は、「薬によらない痛みからの解放が可能である」ことを、科学的に検証しているアメリカでの取り組みについて見てまいりましょう。
思考で痛みをコントロールする
アメリカでは近年、 慢性的な痛みを心理療法で改善してゆくための研究が行われています。2022年のナショナルジェオグラフィック誌*に、次のような記事が紹介されています。
How you think about physical pain can make it worse
〜痛みに対する考え方で痛みが悪化することがある〜

この記事よりますと、鎮痛剤への依存のために命を落とすアメリカ人は年間5万人近くになると言われており、 薬物依存による弊害から患者を救うため、薬に頼らず痛みをとる療法の研究開発が進んでいるのだそうです。
これらの研究においても「痛みに最も関与しているのは脳である」と言われており、「 脳を再プログラムする治療法」の成果について言及されています。
記事では、「思考を変えることで痛みをコントロールできる」という研究結果がいくつか報告されています。
20年近く慢性的な痛みと闘ってきたある患者は、これまでありとあらゆる痛みをとる対策 ーー投薬、 カイロプラクティック、 針治療、 あるいはアフリカの怪しいヒーラーの手当もまで!ーー を全て試してみたけれど、一向に痛みがなくなることはなかった、 と言います。
しかし、この原因不明の痛みを感じ続ける脳に、新たな教育をしてゆく「痛みの再処理療法」によって、痛みに関する自分の思考が変わったことで、この患者は「嘘のように慢性的な痛みが治った」 と述べています。
感情は痛みに関与する大きなファクター
また記事では、Emotional Awareness and Expression Therapy (感情認識表現療法)という痛みの治療法が紹介されていました。
この治療法は患者の感情に深くフォーカスし、 過去のトラウマやネガティブな体験に気づき、それらを表現することで痛みを改善していくプログラムです。
いま起こっている問題を、 感情にフォーカスしながら取り除くという手法。
これは、まさにヒプノセラピーで使われる手法です。
ヒプノセラピーは、体の痛みだけではなく、心の痛みや悩みの解決にも使われます。
生まれてから今まで感じてきた感情の数々が山積みになっている場所(=潜在意識)に、ヒプノシス(=脳が完全にリラックスした)状態でアクセスするのが、ヒプノセラピーの手法です。
自分の痛み、そして、その痛みの原因となっている「怪我や病気に対する自分の感情」に向き合うことで、痛みの軽減ができるとなると、体の痛みだけではなく心もスッキリ元気に回復していけそうです。
この、自分の感情が貯蓄されている「潜在意識」について詳しく学んでみたい方には、当協会が毎月開催している「潜在意識トリセツ講座」がお勧めです。是非お気軽にお問合せください。
痛みと闘うあなたにぜひ試していただきたいこと
これまでずっと悪者扱い・ 邪魔者扱いしてきたあなたの体の痛みに、 そっと寄り添うように「ありがとう、 私を守ろうとしてくれているんだね」 という気持ちを向けてみてください。
これだけで痛みが変化することもあるでしょう。
そして、痛みに関して積み重ねてきた思い込みや勘違いに、少しずつ気づいていきましょう。
「もう絶対治らない」
「○○は危険、△△の運動は禁止」
といったような、医師に言われたか、あるいは自ら作り上げた悲観的な”呪いのような思い込み”は一旦捨ててしまいましょう。
痛みがなければ、 あなたはどんな人生を送っていますか?
痛みが消えたら、どんな素晴らしいことに挑戦したいですか?
これらを自由に思い浮かべてください。
そして、思い浮かんだら、今本当にそれが起こっているかのように、心の底から想像してください。
脳は、いま目の前に起こっていることと現実の区別がつきません。だからこそ、ここでしっかりと脳を騙していきましょう。「今思い描いている理想の自分が本当なんだよ」と脳に、自分に、伝えていきます。

体の痛みと脳と感情の関係
痛み・脳・感情の関係に関する研究は、まだまだ始まったばかりです。
これから新たに発見されていく部分も多いでしょう。
自分の体のことは、実は、医師や整体師といった専門家よりも、その痛みと四六時中付き合っている「自分の脳」が一番よくわかっていることなのかもしれません。
感情は、どうやら痛みとそれを感知して体に痛みを届ける脳の働きに、重要なインパクトを与えることができる存在だと言えます。
ただ、痛みも感情も目に見えませんから、これを科学的に証明してゆくのは難しい局面もあることでしょう。
しかし、このコラムを読んで
「ちょっと痛みに対する考え方を見直してみよう」
「私がいつも抱えるネガティブな感情はどこからきているのだろう」
と思い巡らせてみるのも一つだと思います。
あなたの痛みとの関係も、痛みのせいで感じている悲観的な感情も、変化させてゆく可能性があります。
この記事が、そのきっかけとなれば幸いです。
今回のコラムは、Part3へと続きます。
最終回では、ヒプノセラピーを使って脳を騙し、痛みを軽減するフランスでの医療現場のレポートをお届け致しますので、どうぞお楽しみに。
【参考文献サイト】
*Meryl Davids Landau 2022-04-01, ナショナルジオブラフィック英語版、”How you think about physical pain can make it worse”. 1994-12 https://www.nationalgeographic.com/magazine/article/how-you-think-about-physical-pain-can-make-it-worse (参照 2025-07-25)
