慢性的な体の痛み 「どうしようもない」と諦めていませんか?
痛みと脳と感情の三角関係

   

感情ケア

(全3回・連続掲載予定)

Part 1  「痛み」はあなたの敵ではない!?
Part 2   感情を使った痛みからの解放(アメリカでの試み)
Part 3   脳を騙して痛みを取り去るヒプノセラピー(フランスの医療現場より)

Part 1 「痛み」はあなたの敵ではない!?

痛みのない人生を夢見る私たち

頭痛、肩こり、怪我の後遺症による痛み、腰痛・・・

私たちは生きている間に、このように体のどこかに痛みを感じることがあります。

「偏頭痛は家系だから仕方ない」
「あんなひどい怪我をしてしまったから元には戻らない」

このように慢性的に痛みに支配される人生を半ば諦めつつ、受け入れながら暮らしている方も多いかもしれません。
しかし一方で、痛みを伴う人生のQOL(Quality of Life=生活の質)は著しく下がるため、心のどこかに「この痛みをなんとかしたい」という気持ちを持ち続けている方も少なくないでしょう。

こう聞くと、「痛み=悪」という構図がの脳裏に浮かび上がっているのではないでしょうか?

ここでひとつ、私が子どもの頃に聞いたお話をさせてください。

テレビ番組の特集で見たある男の子のことです。

その男の子は、生まれつき「体に痛みを感じられない」特性1)を持っていました。痛みを感じないだけではなく、皮膚が温度を感知しないため、熱いものに触れてもわからないというのです。

肌は火傷を負っていくのに、「痛み」も「温度」も感じないため、「手を離そう」という脳の働きが起こらない。つまり、知らない間にとんでもなく深い火傷や怪我を負ってしまう恐れがあるのだそうです。

ふつう骨折をすると、その部位が激しく痛みますよね。そこで「折れているかもしれない」と疑い、病院にかかり、骨折が分かれば治療をしてゆくことが可能です。

でもこの男の子は骨折をしても痛みがないので、そのまま骨折が放置される危険性を抱えています。

同様に「痛い」と感じることで気がつく病気もあります。例えば風邪をひいて頭痛がしたり、食当たりでお腹が痛むなど、私たちは症状に苦しむと、それを克服したいからこそ「病に対処しよう」と人は思うものです。
男の子にはこのような病に気づくチャンスがありません。

ここでわかること。

それは、痛みは体の異変を知らせる危険信号でもあるということです。

私たちは「痛みは厄介な存在だ」と感じています。痛みは誰にとっても嫌なもの、辛いもの。一刻も早く取り去りたい、と思うのが当然でしょう。

しかし、危険信号である「痛み」は、私たちを危険な病気や深刻な怪我から回避させてくれる「守り神」の役割も持っている、そう考えると、痛みは必ずしも悪役ではない、敵対視する前に危険を知らせてくれるお役目に感謝をしてみる必要もありそうです。

体の痛みはどこから来る?

それでは、この痛みとはいったいどこからやってくるものなのでしょう?

人が痛みを感じる一般的な仕組みは、痛みの情報サイト2)によると以下のように説明があります。

切り傷や火傷、打撲などにより身体が刺激を受けると、「身体が傷ついた」という情報が発生します。その情報は電気信号に変換され、神経を伝って脳に届きます。脳がその情報を認識して初めて、「痛い」と感じるのです。通常は、痛みの原因となったケガが治ると、痛みも消えていきます。

つまり、体への刺激を脳がキャッチして初めて「痛い」という感覚が生まれます。しかし、この仕組みでは説明のつかない痛みも世の中には存在しています。

「幻肢痛3)」という現象をご存知ですか?

事故などで手足を失った人が、もう存在しない肢体に痛みを感じるという少し特殊な痛みです。痛みは実質的・物理的に体のどこかに生じるものという認識のもとに考えると、かなり不思議な話ですね。
英語ではファントム・ペイン(ファントム=お化け、ペイン=痛み)と呼ばれています。

このように、原因のはっきりしない痛みというものも世の中には存在します。

それらは心因性疼痛と呼ばれますが、現代の医学では心(精神)の問題というより脳(の身体についての認知機能)に不具合が生じるために起こる痛みと考えられており、いわゆる「原因不明の痛み」や「慢性的な痛み」は、脳の認知異常だと考えられています。

痛みには種類がいくつかあり、全ての原因不明の痛みが脳の認知問題のせいだというわけではないでしょう。
実際、脳の研究はいまだに未知の部分が多く、こんなに医療が発展した現在でも、人間の脳に関しては科学的に説明のつかないこと、わかっていないことがたくさんあります。

あなたにはいま原因不明の痛みがありますか?

医師に診てもらったけれど、特に原因はないと言われた痛み。
もう年だから仕方がないと諦めている肩こりや腰痛。

これらの痛みが、先に申し上げたように「自分の守り神」だとすると、痛みは何かをあなたに訴えているのかもしれません。
あるいは、痛みがあなたの脳の認知ミスによるものだとすると、本当はあなたは痛みを感じる必要もなければ、痛みは現実には存在しない、つまり脳が作り出している幻想である可能性もある、ということです。

痛みの正体を暴く

今そこにある痛みと戦っている人に、いきなり「あなたの痛みは幻想ですよ」などと言われても、その意見を受け入れることは不可能でしょう。ですから当然、医師が「あなたの痛みはただの思い込みかもしれませんね」などと患者に言うことはありません。

しかし、このようなケースならあるのです。

私の義母(フランス人)は、長い間いろいろな体の痛みと闘ってきた一人です。この十数年、いつお会いしても必ずどこかが痛かったり、不調だとおっしゃいます。

何度も検査入院をしたり、薬を変えたりするのですが、少し症状が緩和したかと思うも完治することがありません。年齢を考えると仕方がないのかもしれない、と思われるかもしれません。しかし、あるとき医師にこう言われたそうです。

「一度ヒプノセラピーを受けてみてはいかがですか?」

つまり、ドクターは「あなたの心が痛みを作り出しているのかもしれませんね」というメッセージを込め、「ヒプノセラピーであなたの心のあり方と痛みの関係を探ってみませんか?」と提案したわけです。

医師に診てもらっても原因のわからない痛みの正体を医学的に診断することは、専門家でもなかなか難しいことです。
やはり我慢するしかないのか・・・と諦める前に、フランスではこのようにヒプノセラピーが勧められることもあります。

慢性的な痛み、原因不明の痛みや不快にお悩みの方は、ぜひ意識研ヒプノセラピー協会の「体ヒプノ」を体験していただきたいと思います。

体が発する「痛み」からのメッセージを受け取るという、とても面白い体験です。

目に見えない痛みを「敵」と捉えるのではなく、「交渉人」つまりメッセンジャーとして捉えます。体からのメッセージの「発信者」として目の前に現れた「痛み」を追い返そうとするのではなく、痛みのいうことに耳を傾けてあげるのです。

これは医療行為ではありませんが、実際体験していただいた方には「痛みが楽になった」という方がたくさんいらっしゃいます。
そして何より、自分の痛みを通して体と心が通じ合うという体験により、体も心も楽になってゆくのです。まずはぜひ、この体ヒプノを体験しにいらしてください。

実際いま、アメリカでは心理療法を用いた痛みの緩和の研究が進められているのですが、その手法がまさにヒプノセラピーで扱う「感情」が鍵、ということで、これからヒプノセラピーは医療現場においても「痛み緩和療法」として需要が上がっていくものと思われます。

この研究内容についてはパート2へと続きますので、どうぞお楽しみに。

【参考文献サイト】

  1. (参考) 難病情報センター Japan Intractable Diseases Information Center. “先天性無痛無汗症”. 難病情報センター. 2023-11, https://www.nanbyou.or.jp/entry/4360, (参照2025−07-25).
  2. (参考) 痛みの情報サイト 疼痛.jp. “痛みの基礎知識〜痛みを感じる一般的な仕組み”.
    https://www.toutsu.jp/, (参照2025−07-25).
  3. 大住倫弘. 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター. “失った手足の痛みを感じる仕組み”. 2015-08, https://www.kio.ac.jp/nrc/2015/09/11/osumi_press/, (参照2025−07-25)

(ろわ佐奈子)

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